鹿の解体

今年の夏から人に頼まれて、鹿や猪の解体を手伝っている。
自宅から少し上がったところに、ジビエ工房なる獣の解体施設があり、そこで不定期の仕事としてやっている。
自分らにとって貴重な現金収入源のひとつだ。

ジビエ工房に持ち込まれるのは、主に罠にかかった鹿と猪。
害獣駆除の目的で捕られたもので、鹿が圧倒的に多い。
猟期に山で狩った鹿や猪が持ち込まれることはまずないのだが、それでもかなりの数で、次々捕れるから驚く。

かけられている罠は、ほとんどの場合がくくり罠。
罠に獲物がかかると、その場で止めを刺し、血抜きをして、一時間以内(だったかな?)に解体施設へ持ち込まれるという流れになっている。
軽トラの荷台にドカッと乗せられてくるんだから(もちろんそのまま国道や県道を走って)、知らない人が見たらぶったまげるに違いない。

止め刺しは、鹿の場合、棒で頭の付け根(首との接続部)を打つことが多い。
苦しめないように、一撃で倒さなければならない。
棒で一撃したら倒れた鹿に近づき、喉をナイフで突いて血を抜くと、そのうち鹿は絶命する。

・・・と、これは他人がやっているところを見たことがあるだけで、書くのは簡単だが、自分じゃとてもできそうにない。
自分がかけた罠じゃないし、鹿や猪には何の恨みもないからだ。

多少なりとも自分が肉を食べている以上、こいつは避けて通れまいと引き受けた解体の仕事だけれど(牛や豚だって、どこかで誰かが殺し、解体している)、止めを刺して命を奪うことには抵抗がある。害獣駆除なんて、人間の勝手な都合だし。

以前に見せてもらったのは雌の鹿だったが、罠にかかった鹿は抵抗するどころか怯えきってしまっている。
そこへ、棒を持った人間が近づく。
鹿は意外にも、怯えた目をしたまま、一声も発することなく静かに殺される。
その時の怯えた鹿の目が、今も脳裏に焼きついている。
今後、何度その場にいようとも、決して慣れることはないだろう。また、慣れてはいけないことであると思う。

血抜きをして施設に運び込まれてから、腹抜きをする。
猟師が行う腹抜きの手際のよさには感心する。ほとんど手品を見ているかのようだ。
尻から喉のほうへナイフを入れる。
骨盤から大腸を抜き、喉で食道を切断、あばらを切り開いて横隔膜を破くと、嘘のように簡単にズルリと内臓を取り出すことができる。
このとき、フェロモンを出す器官を傷つけたり、尿や乳が漏れたりすると肉が使いものにならなくなるので要注意。
大腸や食道も、内容物が出ないように縛っておく。

腹抜きをされたものは冷蔵庫に吊るされ、こいつを解体することになる。

IMGP7707_サイズ変更
はじめて解体するところを見せてもらったのは、子鹿だった。

IMGP7711_サイズ変更
皮を剥いた状態。

ここからばらしていくんだけど、肉の形や骨の形状、関節の構造などを理解してないと、うまくばらせない。
人のやるところを見て覚えるわけだが、いくら説明を聞いても、次に実際にやってみるとなかなかできないわけで、こればかりは何度かやってみて覚えるしかない。

生きものの体というのは実に神秘的だ。
骨の形や関節の構造など、いちいち理にかなっている。
そんな中で、おやっと思ったことを二点ほど書き留めておく。

1.鹿や猪の前足の付け根には関節がない。
人間の肩にあたる部分で、当然、人間の場合には、股と同じように丸い関節が嵌っているわけだけれど、四足動物にはこれがない。軟骨と筋で胴体に固定されているだけ。
恥ずかしながら知らなかった・・・。

2.自分の腕を見てもわかる通り、血管というのは血が通っていれば一目瞭然だが、血が抜けた状態だとどれがそうだかまったくわからなくなる。
これも新鮮な驚きだった。

IMGP7712_サイズ変更
四肢を外したら、部位に切り分ける。

鹿は、利用できる肉が少ない。
一番貴重なのは背ロース、次いでモモ肉。
モモ肉はさらに、芯玉、内モモ、外モモに分けられる。
背ロースもさらに細かく、肩ロース、リブロース、サーロインなどと分類されるようだが、通常まとめて一本で切り出す。
ブロックとしてそのまま売れるのは背ロースとモモ肉くらいで、他に、内ロース、ランプ(尻の肉)、スネなどを切り出すが、これらは加工用。

もったいないのは、これらを切り出した残りの部分。
バラ肉や首の部分など、食べられる肉がまだまだついているけれど、これらは通常捨ててしまう。
ま、捨てるといっても山に埋めるわけだから、なんらかの生きものに分解されて土に返るわけだけれど。
我が家では、時どきいただいて帰って食べている。

内臓も同様。ハツ(心臓)やレバーは食べられるが、通常捨ててしまう。
余すところなくいただくのが本来だけれど、人に賃金を払って解体しているとなると、割に合わないので、なかなかそんなことはしていられないわけだ。

同じように皮についても、時どき利用する場合があるが(革製品に加工する)、ほとんどの場合は捨ててしまう。
なめすのに時間と手間、それから技術がいるのだ。

ときに、くくり罠にはたいてい前足のどちらかがかかるのだけれど、罠から逃れようとして暴れるため、かかったほうの足は内部で出血していて(ほとんど足がちぎれそうになっているものもいるし、中には足をちぎって逃げてしまうものもいる。野生で足のない個体というのは、たいていが罠にかかって失ったものだ)、使い物にならないことが少なくない。
この場合も、状態の酷いものはやはり捨ててしまう。鹿に申し訳ないけれど。

P1240097_サイズ変更
雄鹿の角も通常捨ててしまう。
はじめて自分で解体した雄鹿の角はもらって帰った。
頭骨から鋸で切断。毛のついた部分は、土にでも埋めておけばそのうちポロッととれる。

解体を見せてもらってから自分で何頭か解体してみて、ようやくなんとなくわかってきた感じ。
注意したほうがいいのは、本筋からは外れるが・・・マダニ。
野生の獣には必ず何匹もついているし、冷蔵庫に入っていたくらいではもちろん死なない。
すごいのは、あまりに平べったくて指では潰せないこと。いくら潰そうとしても生きている。机とナイフの柄とか、硬いもの同士で挟まないと潰せない。
そろそろ活動期でなくなるけど、要注意だ。

関連記事
スポンサーサイト

Trackback [0] | Comment [0] | Category [■ 田舎暮らし日記] | 2017.10.21(Sat) PageTop
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加しています。
記事が面白かったときはポチッとお願いします!
 ↓   ↓   ↓
にほんブログ村 自転車ブログ 自転車旅行へ    
   
   

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)



Comment

Private

 


 Web Page Translation
 You are here / ブログ内の現在地
なかっぴー通信NEO
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2017年10月 21日 (土)
  ├ カテゴリー
  |  └ ■ 田舎暮らし日記
  └ 鹿の解体
 About Me / プロフィール

nakappie

Author:nakappie
1970年生まれ。妻と二人信州伊那谷在住。
2009年10月~2013年5月の旅を記録するために”なかっぴー通信”をスタートさせました。
現在は伊那谷にて節約生活をしながら充電中。
2014年4月、ブログのタイトルを”なかっぴー通信NEO”に改めました。
信州伊那谷より~旅のこと、山のこと、自転車のこと、そして田舎暮らしのことなどなど・・・気ままに綴ってゆきます。
”おもしろきこともなき世をおもしろく”そんなふうに生きていけたらいいですね。

 名言集
すばらしい一日でありますように・・・
 ランキングに参加しています
押してもらえると嬉しき哉

にほんブログ村 自転車ブログ 自転車旅行へ にほんブログ村 ライフスタイルブログ 自給自足生活へ
 Latest Diary / 最新記事
 Category / カテゴリー
 Search Form / 検索フォーム
 にほんブログ村
 アクセスランキング
   
   
i2iポイントサイトへのご招待です♪
 Links / リンク
 Mail Form / メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

 Latest Comments / 最新コメント
 アクセスカウンター
 Monthly Archives / 月別アーカイブ
 RSSリンクの表示
 ブロとも申請フォーム